「複式簿記は人類最高の発明」などと言われます。
たしかに企業の業績を測定するための仕組みは、
複式簿記以外には存在しません。
ところが、ここから税理士たちの「パラダイム」がはじまります。
[パラダイム]paradigm
(科学上の問題などについて)ある時代のものの見方・考え方を支配する
認識の枠組み。
[パラダイムシフト]paradigm shift
ある時代・集団を支配する考え方が、非連続的・劇的に変化すること。
社会の規範や価値観が変わること。
・
税理士は税務に関する専門家です。
租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることが
使命です。
事業者が適正な納税申告を行うために必要になるのが「決算書」。
そのために税理士は、税理士業務に【付随して】
財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行を行います。
日々の記帳指導や税務に関する助言は、
適正な納税申告の実現を図るうえで必要です。
税理士が日々行っている会計業務は、税理士の【付随業務】です。
税理士は税務に関する専門家なのです。
ところが、です。
税理士にとって「この当たり前のこと」が、
いつごろからか当たり前ではなくなってきました。
日本税理士連合会のホームページには、
それを裏付ける記述があります。
以下は「日本税理士連合会」のサイト、
『税理士の専門家責任を実現するための100の提案(改訂版)』
「7.その他税理士に期待されること」
「93.税務以外に期待されること」
からの一部抜粋記事です。
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【ポイント】
税理士業務は、依頼者との間に継続的な顧問契約が多く、
それだけに、税理士は依頼者からみれば、
経営等の総合的な顧問であると考えられていることが多く、
単に税務だけの顧問と思う依頼者は少ないと考えられる。
税務、会計、社会保険、労務関係のほかに
経営の方針、組織、企画立案、予測、調査、分析、財務管理、
資金繰りや企業コンサルタント業務等、諸々の問題に精通していると
考えている関与先も少なくない。
また、企業の事業承継問題等、依頼者の安定した事業の継続に関して
適正な保険やその他の指導ができるのも税理士の業務として
必要なことである。
この諸々の問題に対応できるような事務所の仕組みや体制を整備する
必要がある。
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税理士に向けて書かれたこの文章は、
企業の社長方にとってわかりにくい内容です。
◎税理士は依頼者からみれば、
【経営等の総合的な顧問】であると考えられていることが多く、
単に税務だけの顧問と思う依頼者は少ないと【考えられる】。
⇒「経営等の総合的な顧問」、そして「考えられる」という表現は”憶測”。
日本税理士連合会と税理士たちの”勝手な思い込み”。
私にはそのように感じられます。
◎経営の方針、組織、企画立案、予測、調査、分析、財務管理、
資金繰りや企業コンサルタント業務等、
【諸々の問題に精通している】と考えている関与先も少なくない。
⇒ここまで期待するのは、税理士にとって酷なことです。
たしかに、一部の社長方は期待しているかもしれません。
税理士というだけで、信用してしまう社長もいるのです。
しかし、税務会計の知識と経験の範囲のなかだけで行われる
的外れな経営指導は、社長方にとって迷惑なだけです。
◎企業の事業承継問題等、依頼者の安定した事業の継続に関して
【適正な保険】やその他の指導ができるのも税理士の業務として
必要なことである。
⇒適正な保険は”保険のプロ”に任せたほうが良い。
税理士は保険の契約や受取りの際の税務処理が専門であって、
保険の内容については保険マンのほうがはるかに
知識も経験もあるはず。
保険に関しては税理士は、保険マンと連携を取るべきです。
どちらも社長たちのことを真剣に考えているのですから。
反対に保険マンは、財務や会計に関するコンサルティングなど
表面だけの浅い知識でできるはずがありません。
◎この【諸々の問題に対応できる】ような事務所の仕組みや体制を整備する
必要がある。
⇒日本税理士連合会は、税理士に税務以外のサービスを推奨しています。
顧問先の信頼を得るためには、まずは税務をきちんとやるべきだと
思うのです。
税務調査を受けたときに、
社長たちは税理士にどのような対応を期待するでしょうか。
◎税務署から何も指摘されない状況を望むのか
◎指摘されたらそれはそれでしょうがないと思うのか
◎税理士はその場にいてくれるだけで安心なのか
◎税務調査に備えて税理士は日ごろから何を指導すべきなのか
◎社長方は何のために税理士に顧問料を支払っているのか
◎顧問料とはいったい何なのか
◎税理士(あるいは担当者)は毎月会社に来て何をしているのか
税務調査の際に次々と申告漏れを指摘されるような税理士に、
税務以外に期待することなど、あるのでしょうか。
税理士は税務に関する専門家です。
社長方は税理士に何を期待しているでしょうか
税理士は、社長方に何をすべきなのでしょうか
そして「社長のための会計事務所」につながっていくことになります。
(続く)