記帳代行とは、本来企業が行うべき会計処理を、
税理士が代わってやってあげる行為です。
記帳代行は、2つのケースに分かれます。
(ケース1)
領収書や請求書などの証ひょう書類は企業が整理し、
現金出納帳や必要な会計資料、伝票類を作成します。
会計ソフトへの入力は、税理士側が行います。
(ケース2)
領収書や請求書などの証ひょう書類は、税理士事務所が整理し、
必要な資料や伝票を作成して会計ソフトへの入力も行います。
ケース1は、税理士が行う通常の記帳代行です。
ケース2はというと、
企業規模が小さく、生活や仕事に追われて記帳している暇がない。
あるいは、記帳の重要性を認識していないという場合です。
問題は、「ケース2」のときです。
・
月にあるいは数か月に一度、
会社や個人商店が、領収書や請求書を段ボール箱にドサッと詰めて
税理士事務所に持ってきたとします。
箱の中には領収書が何枚入っているのか、
持参する側も受け取る側も数えていません。
途中で紛失しても他の書類に紛れ込んでも、わかりません。
ある日、税務署が来ます。
調査官から次々と指摘されます。
税理士は、どう対応するのでしょうか。
税理士の責任範囲は、どうなるのでしょうか。
依頼する側は、
「税理士に頼んでいるのだから、」
という安心感があります。
「プロが作った決算書だし、
きちんと処理されているはずだから問題はない」
と思っています。
「それなのに、なぜ、こんなに指摘されるの?」
なぜ、修正しなければならないの!」
どうしてこのような話が後を絶たないのか、考えてみました。
多くの場合、税理士が行うべき「適正な納税申告」について
納税者に何の説明も指導もないまま、処理がなされているのではないか。
そして、ケース2のような記帳代行を、
安易に引き受けているからではないのか。
・
税理士は、納税申告という「法律行為」を行っています。
税務調査の結果に対して、責任を持たなければなりません。
納税に対する納税者の意識が変わるきっかけの多くが、税務調査です。
だったら、税務調査があってもなくても、
日ごろから「適正な納税申告」を実現することは、
税理士にとって基本の基本、あたりまえ、
絶対にそうでなければならないはずです。
税理士が企業に対してやらなければならないこと、それは「税務」です。
税理士法の第1条にあるように、
税務の専門家として、
「独立した公正な立場で納税者の信頼にこたえ、
租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」
ことが使命です。
社長方が税理士に望んでいること、
それは経営のことかもしれませんし、
後継者問題かもしれません。
資金繰りの改善や資金の調達、
業績を向上させるための相談かもしれません。
しかし、それらは税理士の本来の仕事ではありません。
税務をとおして社長(納税者)たちの信頼に応えるのが税理士の仕事です。
「税務を完璧にこなしてこそ、
適正な納税申告を行ってこそ、社長方の信頼を得られる」
ということを忘れてはならないと思います。
同時にやらなければならないことがあります。
それは、「経営に使える会計情報の提供と活用」です。
税理士が普段から行っているのは「税務会計」です。
「税務申告のための会計」です。
しかし、「税務のために行う会計処理」は、
経営に使ううえで多くの矛盾を含んでいます。
その矛盾をなくし、
社長自身が経営に活用できるようにしよう、という提案が、
「社長のための会計事務所」の重要な柱(使命)の一つです。