税理士事務所の職員に税法を身につけさせ、会計理論を覚えさせることは、
それほど難しくはないはずです。
なぜなら、彼らはそれを望んで事務所に入ってきているからです。
しかし、専門知識と技能があるだけでは、彼らは一介の職人にすぎません。
●4月23日の日曜日、
京都で「第1回・社長のための税理士塾」を開催しました。
「社長のための会計事務所」の基本理念に賛同し、
これから一緒に活動していく税理士たちが集まった勉強会です。
税理士のTさんから、最新の「社長のための情報活用」の話も出てきます。
今回の勉強会は3部構成です。
第1部では、
複数の税理士事務所の現場にかかわってきた税理士のHさんから、
その実情を、税理士の目線で発表してもらいました。
多くの税理士は、他の事務所の仕事ぶりに接する機会はありません。
衝撃的な内容も多々あり、今後の業務に大いに参考になったと思います。
第2部は、税理士の仕事ぶりや対応を外部から見てどう感じるか、
特別枠で参加の税理士ではない2名の経験事例です。
税理士に何を期待して頼むのか、税務調査があったときの対応など、
普段なかなか聞けない「依頼する側」からの、率直な意見や感想です。
そして第3部、、、
”税理士の使命・税理士の職責”のテーマに移ったときです。
参加者の一人が、「で、思い出したことがある」と、発言しはじめました。
小学生の頃のはなしです。
となりのクラスから、ドッとみんなの笑い声が聞こえる。
昼休みには、先生と子供たちが楽しそうにドッジボールをしている。
私たちの担任の先生は、笑わない。冗談もいわない。
授業が終われば、すぐに職員室へ戻ってしまう。
いつのまにか帰ってしまい、おしゃべりの機会もなかった。
「先生、、どうして、先生は一緒に遊んでくれないの?」
子供たちが聞いた。
「・・・ボクはね、仕事でここに来ているの」
「君たちと一緒に遊ぶなんてことは、仕事に、はいっていないからね」
「ボクはねえ、生活していくために、
安定しているコウムインになったのです。
だから、君たちに対して一生懸命になる理由などない。
仕事として、最低限のことはしているのに、そんなこと言われても困るよ」
「好いてもらおうとも思っていないから。
別に、この先、君たちがどうなろうと、ボクには関係ないし、興味もない」
「ボクはお給料をもらうために来ている。それだけだ。。。。」
いまになって思えば「事務的だった」ということでしょうか。
小学生には、「事務的=冷たい」と感じたのでしょう。
今回の勉強会で、ふと、当時のことを思い出したようです。
●教師という職業は、子供たちの人生に何らかの影響を与える仕事。
教育者としての使命感を持っていないとできないのではないか。
志や情熱というものがないのか!
事務的にこなせる職業では、けっしてないはずだ。
この話を聞いて、私も思い出したことがあります。
何年か前に、地元山形の大きな病院に行ったときです。
若い先生でしたが、
症状を聞くときに私の方をいっさい見ないのです。
目の前にあるパソコンに向かって、
キーボードをたたきながら話すのです。
なんか、スゴイ違和感です。
”お前は医者だろう。人間を相手にする職業ではないのか!”
そこで質問をしてみました。
「いまのお医者さんは、パソコン相手に大変ですね」
「ブラインドタッチは必須なのですか?」
きょとんとしていました。
人間と会話ができない、
コミュニケーションが取れない医者は医者ではない!
少しは心の勉強もしろよ!
と言いたいです。
●では、税理士はどうなのでしょうか。
税理士は国家資格です。
国から与えられた「使命」というものがあります。
税理士として、事務所の責任者、長として、
自身の事務所をどう経営していったらいいのか。
事務所の質を高めていくうえで、社長方の信頼を得るうえで、
「社長のための会計事務所」を実現していくうえで、
税理士自身の志や理念、使命感、
そして事務所の職員の教育は欠かせません。
職員たちに税法を身につけさせ、会計理論を覚えさせることは、
それほど難しくはないはずです。
なぜなら、彼らはそれを望んで事務所に入ってきているからです。
しかし、専門知識と技能があるだけでは、彼らは一介の職人にすぎません。
今回の勉強会では、
最大の難問である職員の【心の教育】、【心の問題の難しさ】、
そして【情熱や志はどういうときに生まれるのか】、
についても触れました。
税理士と事務所の職員が最終的に相手にするのは、
会計資料ではなく社長(=人)なのです。
●安定しているというだけで教師になったとしたら、、、
肩書だけが魅力で医師になったとしたら、、、
高い報酬がもらえる、それだけで弁護士になったとしたら、、、
こんな教師に子供を預ける気になりませんし、
こんな医者に診てもらう気にもなりません。
弁護士も同じです。
税理士という職業は、責任感、使命感が必要な職業のはずです。
最初の志が大切なはずです。
地位や名誉やカネ儲けが先に立つと、
最後までそのままで行ってしまう可能性があります。
地位や名誉やカネ儲けを基準に意思決定をしてしまいます。
何のためにこの職業を目指したのだろう?
税理士になって何をしたいのだろう?
「社長のため」とは、なんだろう?
考えていく過程そのものが、「社長のための税理士塾(勉強会)」です。
「なぜ、税理士になったのか」の理由はどうであれ、
いかなる動機であったとしても、依頼する側(社長)や世間からは、
教師も医師も弁護士も税理士も、
「そういう職業」として見られていると思います。
これから先も、勉強会は続きます。
(続く)
次回のメルマガは、「税理士の責任」についてです。
税理士に依頼している社長方は、
もしかしたら「ぞっと」するような話かもしれません。
(ITS宇野寛)
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