生産性は、何も工場だけの話ではありません。
事務処理についても同じです。
ところが、経理を含めた事務作業は、
製造業のように作業の工程や成果が見えにくいため、
なかなか改善が進みません。
普段から経理や事務部門では「生産性」という言葉は使いません。
経理や事務側から見れば「生産性とは工場の話」、
自分たちとは無縁の世界だと思っているのです。
税理士事務所の多くも、事務所自体が製造業であるという認識が薄いため
無駄な処理、重複した処理、工程管理、品質チェックや品質管理など
意識していないのが現状です。
☆あるとき、全体会議で社長が言いました。
「来年の目標、生産性を2割アップさせる!」
どうすれば生産性があがるのか、現場は考えます。
☆生産性をあげるとは、、、
「具体的に何をどうすること」だと思いますか?
ご自身の仕事に照らして考えてみてください。
ある企業の社内MG研修で行った講義、「MQと生産性」の一部です。
・
「自分たちの部署で、生産性をあげるにはどうすればいいと思いますか?」
いろんな答えが出てきます。
・生産性とはコストをさげること
・生産量を増やすこと
・時間を短縮すること
・同じ人数で生産量を増やすこと
・効率をあげること
・利益を増やすこと
ところが、一人だけこう聞いてきた社員がいました。
「宇野さん、生産性って何ですか?」
社長は朝礼や会議で、事あるごとに会社の未来について話します。
・来期の目標は経常利益率10%を達成する
・来年の売上目標は今年の1.2倍!
・製造コストを3%カット
・来年の営業利益は5千万円
・営業は粗利益率2%アップが目標
経営には数字はつきものです。
しかし、社長が使う「ことば」や社長が思っている「内容」は、
社員に正確に伝わっているのでしょうか。
そこで重要になってくるのが「ことばの定義」です。
・来期の目標は経常利益率10%を達成する
⇒ そもそも経常利益って何のこと?
10%を達成すれば何か良いことがあるの?
・来年の売上目標は今年の1.2倍!
⇒ 売上を増やすのは営業の仕事、われわれ総務や事務には関係ない
・製造コストを3%カット
⇒ 製造コストって材料費のこと? それとも外注費を減らせってこと?
・来年の営業利益は5千万円
⇒ そもそも営業利益の意味がわからない
・営業は粗利益率2%アップが目標
⇒ 粗利益率を上げるには粗利益率の良い商品を多く売ればいい?
営業の人たちが使う「原価率や粗利率」、
この意味をきちんと理解しているのでしょうか。
「原価率をさげる」と、ほんとうに会社の業績が良くなるのでしょうか?
「粗利率をあげる」目的は、何のためなのでしょうか?
粗利率も原価率も算数で習う割合、比率のことです。
比率や割合を理解しないで、掛け声のように使っても、
行動には結びつきません。
私が講義のなかで重視しているのが「ことばの定義」です。
「生産性」ということばも同じです。
先ほどの社内MG研修の話に戻ります。
この会社がMG研修を始めてから3年経ちます。
参加者のスキルが向上しているのが、はっきりとわかります。
「自分たちの部署で、生産性をあげるにはどうすればいいと思いますか?」
いろんな答えが出るなかで、
「宇野さん、生産性って何ですか?」
と質問をしてきたMさん、
彼は講義後の休憩中に、私にこう言いました。
「僕はあるときから知ったかぶりをするのをやめました」
そうするとまわりの人たちが教えてくれる。
「わからないものはわからない」と堂々と言えるようになるんです。
ちょっと知ってるくらいで「わかったふり」をしないように心掛けています。
じつは私も彼と同じように、
あるときから「わかったふり」をやめました。
そうすると見えてくるものが変わってきます。
「なぜ、どうして?」
疑問が芽生えます。
なぜ、この作業を行っているの?
この書類は誰が見るの?
作る目的は何?
せっかく時間をかけて作った会議の資料、ほんとに活用されているの?
この月次資料、誰も見ていないなら作る必要ないよね
「なぜ、どうして?!」
私がMQやマトリックス会計の研究を続けていられる原動力です。
そして創造力やアイデア、思考力の訓練にもなっています。
「生産性」の話に戻ります。
ネットで検索するとウィキペディアにはこう書かれていました。
『生産性(せいさんせい、Productivity)とは、
経済学で生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度、
あるいは、資源から付加価値を産み出す際の効率の程度のことを指す。』
この説明を読んで、
「おお、なるほど!」
「難しい言葉が並んでいるだけで何のことかよくわからない」
さて、あなたはどちらですか?
(次回に続く)
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