◎これまでの複式簿記では、診断の基礎となるデータが元帳の口座の中に
分散していて全体の見通しがきかず、個々の取引が日付順に雑然と記録
されているので、経営診断の生きた資料をそこから引き出すことは難し
かった。
◎そのため、こんにちの経営診断学では企業活動の結果であり残高にすぎ
ないB/SとP/Lだけをたよりにして、企業の安全性や活動性や収益性
や発展性を測定しているにすぎない。
◎こんなやり方は、ひと昔前の町医者が、聴診器と体温計だけをたよりに
して病状を判断したのに似ている。
(前回までのあらすじ)
「経営者は数字で経営を考えなければならない!」
「決算書くらい読めないようでは社長として失格!!」
そこで多くの社長たちは会計を学ぼうとします。
税理士たちも、
自分たちが作る決算書をどのように説明しようかと頭を悩ませ、
解説のしかたや分析に工夫を凝らし、
わかりやすい帳表やグラフを作ろうとします。
ところが、
【これだ!】という根本的な解決策はでてきません。
そしてとりだたされるのが、
・B/S(貸借対照表)
・P/L(損益計算書)
・C/S(キャッシュフロー計算書)
の関係です。
ところが「利益が出ているのにカネはないのはなぜか?」
については、この3つの表からは説明ができません。
そこでこれらの3つの関係(決算書の構造)を解説しようと、
いろいろな書籍が出版され帳表が考案されました。
「そもそも、なぜ3つに分解するのか」
そして
「なぜ、3つの関係を【あえて】説明しなければならないのか」
決算書を「わかりやすく解説しようとした書籍」は
世のなかにたくさん存在します。
ところが、決算書の「わかりにくさを追求した本」は、
なかなか見つけられません。
「わかりにくさを追究することで、
反対に、決算書の仕組みが見えてくるかもしれない!」
と思い、
「これなら決算書の仕組みがわかる!」
と題して、ある企業の事例で決算書を検証しようという試みです。
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日本人の会計学者が書いた本からの抜粋です。
◎これまでの複式簿記では、診断の基礎となるデータが元帳の口座の中に
分散していて全体の見通しがきかず、個々の取引が日付順に雑然と記録
されているので、経営診断の生きた資料をそこから引き出すことは難し
かった。
◎そのため、こんにちの経営診断学では企業活動の結果であり残高にすぎ
ないB/SとP/Lだけをたよりにして、企業の安全性や活動性や収益性
や発展性を測定しているにすぎない。
◎こんなやり方は、ひと昔前の町医者が、聴診器と体温計だけをたよりに
して病状を判断したのに似ている。
すでに40年以上も前に書かれた内容ですが、
会計の世界では、いまだに同じことが続いています。
「決算書の見方や分析・解説のしかた」のセミナーが
各地でさかんに行われているのを目にするたびに、
決算書が、いかに世のなかで重要視されているのか、を感じます。
・
『ある日、文具屋で100円のボールペンを現金で買いました。』
この事実が決算書にどう反映されていくのか、
どのように分類され集計されるのか、
一連の会計処理の流れを見ていくと、
【ある処理】を境に「現金とボールペンの関係」が断ち切られます。
「ボールペンを現金で買った」という重要な意味が失われるのです。
それは、元帳に転記され合計残高試算表に集計された時点です。
「ボールペンを現金100円で買った」という取引を
会計記録として残すために「仕訳」に変換します。
この作業に必要なのが「簿記の技術」です。
そして「借方(かりかた)・貸方(かしかた)」という
会計用語が出てきます。
(借方)事務用消耗品費 100 /(貸方)現金 100 (摘要)ボールペン代
この段階では、ボールペンと現金の関係性がわかります。
ところが元帳へ転記され合計残高試算表へ集計された途端に、
この取引は意味を失います。
「借方:事務用消耗品費」と「貸方:現金」が分断されるからです。
事務用消耗品費の科目には、
現金で払おうと、
預金で払おうと、
クレジットで払おと、
買掛金で買おうと、
相殺されようと、
借方に仕訳された「事務用消耗品費」だけが集計されるのです。
・
ここまでは簿記会計で習う「決算書を作る手順の話」でしたが、
会計ソフトでも同じことが起きています。
(借方)事務用消耗品費 100 /(貸方)現金 100 (摘要)ボールペン代
この仕訳を入力したとたんに、
会計ソフトのデータベースには次のように記録されます。
(このフォーマットが主流になりつつあります)
(借方)事務用消耗品費 100
(貸方)現金 100
(摘要)ボールペン代
この3行は会計ソフトの内部でバラバラに記録されます。
それぞれのデータは「キー」をもとに一瞬に画面に表示されるため、
あたかも一行に記録されているように見えるのです。
では、なぜ、会計ソフトではこのようなデータを作るのでしょうか。
決算書や各種帳表を集計する際に「都合が良い」からです。
会計ソフトにおいても現実の会計と同様に
「仕訳の意味や関連性は重要ではない」のです。
・
「宇野さん、これじゃ会計の説明と一緒でさっぱりわかりません!」
そこで、
会計とは全く関係のない「期中の社員の移動の計算」に、
時間をかけて考えてもらったわけです。
前回までの問題を、会計の視点から集計した帳表がこちらです。
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日本人の会計学者が書いた本からの抜粋をもう一度ご覧ください。
◎これまでの複式簿記では、診断の基礎となるデータが元帳の口座の中に
分散していて全体の見通しがきかず、個々の取引が日付順に雑然と記録
されているので、経営診断の生きた資料をそこから引き出すことは難し
かった。
◎そのため、こんにちの経営診断学では企業活動の結果であり残高にすぎ
ないB/SとP/Lだけをたよりにして、企業の安全性や活動性や収益性
や発展性を測定しているにすぎない。
◎こんなやり方は、ひと昔前の町医者が、聴診器と体温計だけをたよりに
して病状を判断したのに似ている。
・
「利益が出ているのにカネはないのはなぜか?」を
いまの会計(決算書)の仕組みに求めること自体、無理な話!なのです。
「じゃあ、何か方法はないのか!」
(つづく)