◎「経営者は数字で経営を考えなければならない!」
「決算書くらい読めないようでは社長として失格!!」
そこで多くの社長たちは会計を学ぼうとします。
税理士たちも、
自分たちが作る決算書をどのように説明しようかと頭を悩ませ、
解説のしかたや分析に工夫を凝らし、
わかりやすい帳表やグラフを作ろうとします。
◎でも、【これだ!】という根本的な解決策はでてきません。
そしてとりだたされるのが、
・B/S(貸借対照表)
・P/L(損益計算書)
・C/S(キャッシュフロー計算書)
の関係です。
◎ところが、「利益が出ているのにカネはないのはなぜか?」
については、この3つの表からは説明ができません。
そこでこれらの3つの関係(決算書の構造)を解説しようと、
いろいろな書籍が出版され帳表が考案されました。
「そもそも、なぜ3つに分解するのか」
「なぜ、3つの関係を【あえて】説明しなければならないのか」
そして肝心なのは、
「説明してその先、どう活用していくのか!」
■社長たちの素朴な疑問、
『決算書では利益が出ているのにカネはないのはなぜか!』
長年のこの疑問に対し、先に結論を言えば、
◎現金と利益の増減は別々の動き方をする
◎現金と利益との間には相関関係は一切ない
利益は一定期間で区切った差額、実態がないもの、現金は実態があるもの。
利益という差額概念と現金という実態がある【もの】との間には、
何ら関係性がありません。
では、利益と現金との間にはあたかも関係があるように解説しはじめるのは
なぜなのでしょうか?
このことがきっかけで、
私は「キャッシュフロー計算書」に疑問を持つようになりました。
◎在庫が増えているせいで資金が【寝ている】
◎売掛金の現金回収と利益が計上される時期が異なる
◎設備投資に資金が回っている
◎借入金の返済が資金繰りを圧迫している
◎資金繰りは流動比率に大きく影響される
◎売掛金(回収)と買掛金(支払)のバランスが重要
・
書籍などでこれらの解説を目にするたびに思います。
ここに書かれているのは【たんなる現象】にすぎない。
「在庫が増えるからキャッシュが減る」
のではありません。
在庫を減らせば資金繰りが良くなるような
錯覚を起こしてしまうのではないか。
「在庫を減らせば資金繰りが良くなる」という発想は、
会計を専門的に学んできた人たち特有の、
決算書や会計を【静止画像】でとらえてしまう習性なのではないか。
・
利益と現金の話に戻します。
これらの疑問に答えようとさまざまな帳表が考案されました。
それが2年分のB/Sから作るキャッシュフロー計算書や
資金別貸借対照表です。
そして利益と現金との関係を説明できるようにと
税理士やコンサルタントは積極的にセミナーや研修会に参加し、
キャッシュフロー計算書や資金別貸借対照表の構造作り方を学び、
解説のしかたや活用方法を経営に活かせないかを試みます。
■間接法によるキャッシュフロー計算書や資金別貸借対照表は、
もともと存在していた「資金運用表」がベースになっています。
*【資金運用表】(参考)ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
企業が取得した資金の源泉とその使途を示した表。
資金適用表ともいい、通常経営分析に用いられる。
比較すべき一定期間の貸借対照表の勘定科目について、
その当初有高と最終有高の差を資金の源泉と運用に
分類、整理し、この2つを対照表示する。
これによれば商品や製品の販売、借入れ、増資などによって
どれだけの資金を取得したか、他方原材料や商品などの資産の購入、
負債の支払いなどによってどれだけの資金を支出したかがわかり、
資金の調達、運用の適正さを判断できる。
現金は、財布のなかから払えば減るし、もらえば増える。
現金は、本来会計とは関係ないところで増えたり減ったりします。
ところが経営となると話は別です。
現金がいま会社にいくらあるのか、
この先いくら払うのか、わからなければとても経営などできません。
そこで会計で記録された数字をもとにこれらを明らかにしようと
間接法によるキャッシュフロー計算書や資金別貸借対照表が考案されました。
キャッシュの流れをきちんと記録したもの、
それが現金出納帳、当座預金照合表そして普通預金の通帳です。
ここには、キャッシュの出入りがありのまま日付順に記録されています。
期中でキャッシュが不足するのは、
「入金が出金よりも少ないから」
「入金以上の出金があったから」
にほかなりません。
一時的な現象も含め、キャッシュが不足するのは以上の理由です。
それらをきちんと分類体系化した帳表がキャッシュフロー計算書。
期首と比べてキャッシュが増えたのか減ったのか、
その過程を明らかにしようと2000年から「キャッシュフロー計算書」の
提出が大企業に義務付けられ注目されはじめました。
・
私が、キャッシュフロー計算書に疑問をもったきっかけの2つ目が
「中小企業がこの表を作る目的」です。
何のためにこの表を作るのか!です。
なぜ。税理士が大企業で義務付けられているこの表を、
中小企業の社長方に説明しようとするのか、
この表をこの先の経営に、どう活用していくのか!です。
間接法で作られたキャッシュフロー計算書には、
現金出納帳、当座預金照合表そして普通預金の通帳に記録された
本来のキャッシュの流れがどこにも出てこないにもかかわらず、です。
次回は、キャッシュフロー計算書について考えます。
(つづく)
最近強く感じるのは、
原価計算もキャッシュフローも
【会計が根底にある】ということです。
会計人や会計学者が言い出せば、
それが正しいと思ってしまうことです。
社長たちは、もっと現場の感覚を大事にしてください。
怖いのは、経営を理屈で学んだだけの
会計に詳しいだけの人たちが経営を語ってしまうことです。
それがまかり通ってしまうことです。
それに立ち向かえるのが税理士です。