あるとき、MQ会計の講義中に質問がありました。
「MQ会計はどうしてアルファベットを使うのですか?」
「変動費や固定費ではダメなんですか??」
質問したのは印刷会社の経理部長です。
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変動費と固定費については前回書きましたので
今回は、
「MQ会計はどうしてアルファベットを使うのですか?」
について考えてみようと思います。
前回のメルマガで「定義」を説明する際に使った「偶数のクイズ」、
○か×で答えてください。
1.2で割り切れる数を偶数という(答えは×)
2.-2は偶数である(答えは○)
3.0(ゼロ)は偶数である(答えは○)
という内容でした。
偶数の定義は
『 2で割り切れる整数 』です。
しかし、数学における定義は、
すべてがこのように文章で表現できるとはかぎりません。
たとえば、
[÷]記号の意味は?
と聞かれて、文章で説明することは、私にはできません。
・割り算のときに使う記号で、
・割り算とは割る数と割られる数があって、、
・割り算は公平に分けるために使うもので、、、
・同じ数ずつ分けられるところまで分ける計算で、、、、
「割る」は「÷」という記号で表す!
と開き直るしかありません。
そのために小学校低学年から基本的な記号を教え、
体にしみこませる、のでしょうか。
ちなみに、数学における偶数の定義は
[2n](nは整数を表す文字)
文章を使わずに式で定義することができます。
前回のメルマガで紹介したように、
「変動費は売上高に比例する」
このような「文章による変動費の定義」はあいまいで、
解釈する人によって求める損益分岐点売上高が異なってしまいます。
この定義はけっして科学的とは言えません。
MQ会計では原価に相当する定義は[VQ]です。
VQというのは符号ではなく「定義」なのです。
偶数の[2n]と同じです。
管理会計では
「売上高-変動費=限界利益」
ですが、
MQ会計では
「PQ-VQ=MQ」ではありません。
なぜなのか!
これまで会計を専門的に学んできた人たちの多くが
最初に突き当たる【壁】です。
もし、
「PQ-VQ=MQ」の感覚のままMQ会計を実践しても
肝心なMQアップの発想にはつながりません。
MQ会計の核心部分からは遠ざかるばかり。
「GアップにはPアップ、Vダウン、Qアップ、Fダウン」
のような平凡な発想しか浮かびません。
この発想は管理会計における
「利益を増やすには売上を上げ、変動費を下げ、固定費を削減する」
という発想と同じなのです。
ここを乗り越える一つの方法が2日間のMG研修です。
1~2回参加した程度では、なかなかわかりません。
MQ会計を本気で伝えようとする税理士やコンサルタントの方たちには
少なくとも続けて10回はやってほしい。
・理論や手法だけでは何ともならない
・会計の知識や経験だけでは太刀打ちできない
・理屈通りにはいかない(逆転の発想も必要)
・基本、考え方がいかに重要か
・会計の知識が逆に(MQを理解するうえで)障害になる
・MQ会計は社長のために、現場のために存在する
分析やコンサルのツールではない(分析してはいけない)
・一回でわかった気になる、じつはこれが怖い!
・他人に良いからと勧められてもその人が良いと思っているだけ
・やってみないとわからない、
・気づきと発見の連続!(第一発見者の重要性)
・だからMGは「教えない教育」、これが人を育てる!
・思考力、応用力を身につけることの大切さ
・いかに素直になれるか
・いかに人の話をきちんと聞けるか
・「MGをやったことがある」ではMQを語る資格はない!!
(20年前の私がそうでした)
私がMG研修をとおして感じてきたことです。
MQ会計とMGは切り離せません。
数学は「抽象的」です。
「抽象的」だから他の事象に当てはめることができ、
応用が可能です。
MQ会計も同じように「抽象的」です。
数学のように記号と式を使って、
さまざまな業種の事象に応用することができます。
これがMQ会計が記号(アルファベット)を使う理由ですが、
私が「これだ!」と思うメリットは、
「誰でもわかる」です。
「誰でも」というのは社長や幹部社員だけでなく
「パートさんも含めて全員」です。
・
ちょっと想像してみてください。
社員に「経営状況を数字で理解してほしい」と思った社長は
経理部長に昨年の業績を「数字を使って説明」してもらうことにしました。
決算申告も無事に終わり、今期に向けての経理部長の発表です。
◎日ごろからの社員みなさんの努力に感謝します。
みなさんの頑張りの結果、昨年(今回終了した決算)は、
一昨年と比べて売上も順調に伸び前年対比120%でした。
その結果、経常利益で前年対比150%を達成することができました。
◎利益が増えた大きな要因は、
売上の増加に加えて粗利率が3%上がったことです。
製造現場と営業の努力もあって全体の原価率が3%下がった、
つまり粗利率が3%上がったことも利益の大幅な増加につながっています。
◎ところが今期はご承知のように
新型コロナ感染症の影響で売上も下がっています。
2カ月が経過した時点で前年同月対比で60%にまで落ち込んでいます。
何とかこの危機を全員で乗り越えなければなりません。
どうかみなさんにご協力をお願いするとともに、
一層の頑張りを期待します。
と言って資料やグラフを配って解説をはじめたとします。
さて読者のみなさんは、この「よくある光景」を想像しながら、
どう感じるでしょうか。
私だったら、、、
(次回へつづく)