053.他人ごと

◎このデパート、

 いったん経営権を譲渡したがうまくいかず、

 自分たちの手でなんとかしようと経営権を取り戻した。

 ところが、経営トップの改革意欲が、現場の従業員から伝わってこない。◎「他人ごと」という言葉が、ふと頭に浮かんだ。

 


 

山形市内に1件だけ残ったデパートがある。

私が小さかったころは、

屋上は、回転する飛行機や乗り物などがある「遊園地」だった。

 

一時期は数件のデパートがあったが、

いま残っているのはこのデパートだけになった。

山形市民にとって特別な存在かもしれない。

 

都会の百貨店に比べると店内も狭いしこれといった特徴もないのだが、

小さいころから慣れ親しんでいるせいか、行きたくなる。

 

最上階にあった食堂が何年か前から閉店したままだったが、

久しぶりに行ってみると新しい「レストラン」が開店していて

入口にメニューがある。

見ているうちに疑問がわいてきた。

それを確かめたい気持ちもあった。

 

             ・

 

外からは見えなかったが、入ってみると思ったより広い。

年配の女性二人連れやお昼を食べに来た中高年のサラリーマンなど

店内には7、8人ほど客がいる。

混んではいない。まばらといった感じだ。

 

14、5人が座れそうな大きなテーブルにひとりだけ座った。

接客係の女性が二人いるのだがなかなか来ない。

 

「おねがいします」

 

ようやく注文を取りに来た。

 

「水はセルフサービスですか?」

 

「いま、お持ちします」

 

メニューを見ながら一つ目の疑問を聞いてみた。

 

「このメニューって税込みですか、税抜きですか?」

 

「わたしパートで入ったばかりなので、、、」

 

そんなこと聞かれても困ります、といった感じが伝わってくる。

パートだからなに?、と思ったが

「聞いてきてください」

 

新入りといっても少し年配のその女性が戻ってきた。

 

「税込みだそうです。10月以降も同じ値段だそうです」

 

「メニューに書いてないのは残念だけど、スゴイね!」

「ナポリタンお願いします」

 

もう一つの疑問、

メニューにはナポリタン単品の写真しか載っていない。

はたして飲み物は付いてくるのか別注文なのか。

メニューからだけではわからなかったのだが、あえて聞かなかった。

 

             ・           

 

しばらくして「ナポリタン」が運ばれてきた。

木製のお盆にナポリタンとサラダ、スープがのっている。

ナポリタンが単品でくるのかと思っていたので少し驚いた。

 

ところが、ところがである。

 

スープがこぼれてお盆の半分が”びちゃびちゃ”なのだ。

みじん切りのパセリもこぼれている。

運んできたのは先ほどのパートではなく制服を着た女性だ。

 

気づいているはずだが

そのまま盆ごと置いて行こうとした。

 

 

「大沼」というこのデパートは次のような経緯がある。

 

(あるニュースサイトから抜粋)

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●創業は元禄13(1700)年、創業320年の山形県唯一の名門百貨店。

売上高は平成5年2月期がピークで196億6219万円。

その後の30年同期は81億3500万円と半減し、16期連続の減収、

4期連続の赤字となり、4月、事業再生のマイルストーンターンアラウンド

マネジメント(MTM、東京)に再生のため経営を譲渡した。

 

●「山形から百貨店の灯(ひ)を消すな!」。

経営再建中の老舗百貨店「大沼」について、山形市、山形商工会議所、

七日町商店街振興組合は20日、山形市内で共同記者会見を開き

「大沼で買い物をして買い支えていこう」と訴えた。

官民共同による異例の訴えは、経営再建を開始した投資事業会社

「マイルストーンターンアラウンドマネジメント」(MTM、早瀬恵三社長)が

当初の計画通り、再建策を進めていない不信感が背景にある。

 

●会見した山形市の佐藤孝弘市長は立ち上がり、

「山形市民が愛し続けてきた大沼を応援するため、買い支えていくしかない」

と市民に呼びかけた。

経営再建途上にある大沼の現状に「われわれに何ができるのか」と

自問自答した結果、「買い支えしかない」との結論にいたったという。

「極めて特殊な呼びかけだが、手遅れになっては遅い」と続け、

「市民のみなさん、県民のみなさん、応援してあげてください」と訴えた。

 

●経営再建中の百貨店「大沼」(山形市)について、

地元の同社役職員が設置した特別目的会社(SPC)「大沼投資組合」は

23日、投資ファンドの所有する全株式を22日付で取得、

百貨店大沼を経営する親会社として経営再建に乗り出すと発表した。

 

●大沼の新社長となった永瀬孝氏(65)は、他の取締役らとともに記者会見し

「われわれは大沼の経営を大沼従業員に取り戻すこととした」

と述べ、同百貨店を守りたいとする人々からの融資を原資に

MTMから2億円分の債券譲渡を受けたことを明らかにした。

 

永瀬社長は、大沼社長でMTM社長も兼ねていた早瀬恵三氏を22日付で

大沼社長から解任し、MTM関連の他役員4人も解任したことを明らかにした。

 

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いったん経営権を譲渡したがうまくいかず、

自分たちの手でなんとかしようと経営権を取り戻した、ということらしい。

 

ところが、

 

このレストランからは

「会社を盛り立てていこう」という感じは伝わってこない。

 

「他人ごと」という言葉が頭に浮かんだ。

 

山形市民が買い物で支えようとしても、

現場の従業員たちにとっては「他人ごと」なのかもしれない、と思った。

 

             ・           

 

レストランのテーブルにはハガキ大の「アンケート」が置いてある。

はたしてこのアンケート、何のためにどのように活用するのだろうか?

疑問に思いながら書いてみた。

 

 

<< アンケートにご協力のお願いいたします。>>

 

 ◎ご来店日 2019年9月27日(金)13 時頃

 

 ●どのメニューをご注文くださいましたか

  [ ナポリタン ]

 

 ●味、盛り付けはいかがでしたか

  1とても良い 2良い 3普通 4やや悪い 5悪い

  (あえて空欄にした)

 

 ●スタッフの接客はいかがでしたか

  1とても良い 2良い 3普通 4やや悪い 5悪い

  (あえて空欄にした)

 

 ●その他 ご意見やご希望のメニューなど

 

  小さいころから大沼デパートに来ていたので

  応援したい気持ちで買い物をしています。

 

  レストランの売上を増やすための工夫がほしい!

 

  1.メニューには「税込み、10月以降も据え置きです」と

    明示してみては?

  2.単品だと思って注文したらサラダとスープがついてきた。

    メニューで「お得感」をもっとアピールしてみては。

  3.7階に来るまで「大沼レストラン」の存在を知らなかった。

    1階の入り口や通行人にもわかるように工夫してみてはいかがですか。

  4.経営トップの改革意欲が現場からは残念ながら伝わってきません。

 

  大沼デパート、ガンバレ!

 

               (大沼デパートのファンより)

 

 

食事が終わってレジに行くと、

先ほどスープをこぼしたまま持ってきた女性がいた。

 

「先ほどはすみませんでした」

 

謝るところはすばらしい!

 

「アンケート書いたんですが、、、」

 

「こちらへ入れてください」

 

といって指さした箱には50枚以上が裏返しになっている。

 

「スゴイ量ですね」と言って感心した。

 

お昼にこれほどのお客が来ているのか、と驚いたのだが、

この女性の返事を聞いてさらに驚いた。

 

「いえ、これ一ヶ月分です」

 

「なにぃ!」と思ったが、やめた。

 

せっかくのアンケートが一ヶ月分箱の中に入れられたままなのだ。

 

それこそ、何ためのアンケートなのだろうか。

 

複雑な気持ちで「大沼レストラン」を後にした。

 

 


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